roff - roff
清書システムの調査
roff
とは清書プログラム群の一般名称です。
troff,
nroff,
groff
などの名前で知られています。
roff
清書システムは、整形用言語、マクロパッケージ、
プリプロセッサ、出力デバイス用ポストプロセッサ、
ユーザ用フロントエンドプログラム、そして変換ツールから
構成されています。
今日、最も一般的な roff
システムはフリーソフトウェアでの
実装である
groff (`GNU roff')
です。groff
より前の実装は「古典」
(1973 年まで遡ります)
と呼ぶことにします。
groff
は、古典である祖先のシステムと下位互換性がありますが、数多くの
拡張がされており、今もなお進化し続けています。
ほとんどすべての計算機システムで利用できるため、今日では事実上の
roff
標準となっています。
その古さにもかかわらず、roff
は今日でも広く使用されています。
例えば、UNIX
システムのマニュアルページ
(
manページ
) は roff
で書かれています。
テキストデバイスに対する
roff
出力は、いまだに並ぶもののないほど優れて
います。グラフィカルな出力も他のフリーの清書プログラムと同等の品質を
持っていますし、ものによっては商用システムのものよりも優れているときも
あります。
このドキュメントでは概要のみを示し、詳細なドキュメントについては
ポインタを示します。
このドキュメントは維持されておらず、時代遅れになっている可能性が
あります。正確なドキュメントが必要なら
groff info ファイルを
参照してください。これには詳細で現実に即した正確なリファレンス情報が
含まれています。
roff
システム用の言語を指す
3
つの用語があります。
troff 言語 は、
roff
の古典的な部分に重点を置くときに使われます。
groff 言語 は GNU
拡張を含んでおり、それに対して
roff 言語
は一般的な用語です。
groff 言語
のすべての部分について記述されたドキュメントの一次情報源は
groff info ファイルです。
groff(7)
マニュアルページでは、定義済みの言語要素すべてについて
簡潔な説明をしています。
roff
を使用したドキュメントは、普通のテキストファイルを整形用
要素で修飾したものです。
マクロパッケージの 1
つを使って高品質のドキュメントを書くのは
とても簡単なことです。
マクロパッケージは高水準プログラミング言語のようなものであり、
それに対して素の roff
言語は C
やアセンブラのような低水準言語に
たとえられます。
roff
言語は低水準のリクエスト、マクロ定義、エスケープシーケンス、
文字列変数、数値レジスタまたはサイズレジスタ、そして
C のような
制御構造を提供する完全なプログラミング言語です。
この言語の要素についていくらか説明が必要でしょう。
リクエストは、C, C++
のようなプログラミング言語によって定義された
基本的な整形用コマンドです。それに対して、マクロは
roff 言語で
記述された整形用コマンドです。
ドキュメントの著者は、リクエストとマクロを使う際の違いに
気づくことはないでしょう。どちらもドット
`
.'.
始まりの単独行で記述されます。
ただし、望むならば、ユーザは独自のマクロを定義できます。
エスケープシーケンスはインライン要素で、バックスラッシュ
`
\'\
で始まります。これらはさまざまな機能を実装するのに
使われます。それには、
\(( を用いた非 ASCII
文字の挿入、
\**
を用いた文字列の内容の挿入、
\nn
を用いたレジスタ変数の挿入、
\ff
を用いたフォントの変更、
\""
を用いた文中のコメント、
\\\
のような特殊な制御文字のエスケープ、
その他多くの機能が含まれます。
フォーマッタは groff
ドキュメントを解析し、それを特殊なデバイスに合った
形式に変換するためのフロントエンドプログラムです。
古典的な
roff
にはフォーマッタが 2
つあります。
nroff
がテキストデバイス用で、
troff
がグラフィカルデバイス用です。
これらのプログラムは
groff
実装でもまだ存在しますが、通常は
groff
と呼ばれるプログラムを通してアクセスされます。
これによって、古くからの機能を
1
つのプログラムに結合し、拡張
できるのです。 groff
には多くのコマンドラインオプションがあります。その大部分が
troff
からもらい受けたものです。
このオプションの密林から逃れるべく、ユーザフレンドリなユーティリティ
grog (`groff guess'
からとられた名前です)
が作成されました。
これは、どの引数を使うべきかを、ドキュメントから推測して、適切な
コマンドラインを表示します。
完璧なものではありませんが、取り掛かりには良いでしょう。
groff
でもまだ利用可能な古典的プリプロセッサです。
- eqn
- 数式を埋め込むためのものです。
- grap
- グラフィカル要素を構成するためのものです
(このプリプロセッサは
groff
と一緒にはついてきません。追加パッケージです)。
- grn
- gremlin
図を埋め込むためのものです。
- pic
- 図を作成するためのものです。
- refer
- 参考文献の参照用です。
- soelim
- 他の roff
ファイルを埋め込むためのものです。
- tbl
- 長方形のテーブル用です。
これらのプリプロセッサはそれぞれ独自の言語を定義しており、
プリプロセッサに通されると、roff
コードに変換されます。
ですので、これらの言語で書かれた部分は
roff ドキュメントに
埋め込んであっても良いのです。
こうした拡張ドキュメントは、実際のフォーマッタにかけられる前に、
対応する 1
つ以上のプリプロセッサに通されます。
プリプロセッサプログラムは、プリプロセッサ用に
限定されているドキュメントの部分を抽出し、変換します。
プリプロセッサは、
それらのプログラム名を使った
UNIX
パイプラインで呼び出すことも、
もしくは groff
オプションで自動的に呼び出すこともできます。
プリプロセッサ |
groff オプション |
|
eqn |
-e |
grap |
-G |
grn |
-g |
pic |
-p |
refer |
-R |
tbl |
-r |
soelim |
-s |
マクロパッケージは、ある特殊な種類のドキュメントを簡便な方法で
フォーマットするのに適したマクロの集合です。
マクロパッケージによって、roff
の使い勝手が格段に良くなります。
パッケージのマクロ定義は、
name.tmac (または
tmac.name)
と呼ばれるファイルに保管されています。ここで、
name
はこのパッケージに対する
roff 内部での名称です。
すべての tmac
ファイルは、 1
つあるいは少数のディレクトリ中の標準の場所に保管されています。
ドキュメントが使用するマクロパッケージは、
フォーマッタのコマンドラインオプション
-m-m で指定し、例えば
troff -mtroff -m
namename や
groff -mgroff -m
namename
とします。
マクロパッケージの命名およびその置き場所についての一般的な詳細は
groff_tmac(5) にあります。
古くからある有名なマクロパッケージは
man,
mandoc,
mdoc
がマニュアルページ用、そして
me,
ms,
mm
が書籍、記事、そして手紙用です。
これらのコレクションのほかにも、groff
はさまざまな用途の
新しいマクロパッケージを提供しており、その数は増加しています。
例えば、他のファイル形式を統合したり変換したりするものです。
マニュアルページ (man
ページ)
はファイル名の拡張子として
セクション番号をとります。例えば、このドキュメントのファイル名は
roff.7
です。つまり、このドキュメントはマニュアルページの
section 7section 7
に保存されているということです。
古典的なマクロパッケージは、パッケージ名を拡張子にとります。
例えば、
me
マクロパッケージを使ったドキュメントは
file.me となり、
mm
マクロパッケージに対しては
file.mm 、
ms
マクロパッケージに対しては
file.ms 、
pic
ファイルに対しては
file.pic
といった具合です。
ほとんどのテキストエディタは
roff
を使ったドキュメントの編集を
サポートしています。特に使い勝手が良いのが、Emacs
エディタ
とその仲間での
nroff-mode
です。
- GROFF_TMAC_PATH
- コロン区切りの検索ディレクトリリストです。
groff_tmac(5)
を参照してください。
- GROFF_TYPESETTER
- デフォルトのデバイスです。
- GROFF_FONT_PATH
-
devname
コロン区切りの検索ディレクトリリストです。
troff は、 -F-F
コマンドオプションで与えられたディレクトリを先に検索します。
次に、 GROFF_FONT_PATH
を探します。
最後に、標準ディレクトリ
(/usr/share/groff_font)
を探します。
デフォルトでは、
groff
は全データファイルを
/usr/share/groff_font
のサブディレクトリと
/usr/share/tmac
へインストールされます
(例外はシステム固有のマクロパッケージへのラッパファイルであり、これらは
/usr/share/tmac
にインストールされます)。
この場所は、システムによっては異なるかもしれません。
以降、前者を
<groff_font_dir>
として、後者を
<groff_macro_dir>
として表現します。
-
<groff_macro_dir>/troffrc
- troff
用の初期化ファイル
-
<groff_macro_dir>/name.tmac
-
-
<groff_macro_dir>/tmac.name
- マクロファイル
-
<groff_font_dir>/devname/DESC
-
name
デバイス記述ファイル
-
<groff_font_dir>/devname/F
-
name デバイスの
F
フォント用のフォントファイル
最後に、ローカルのマクロディレクトリ
/usr/share/tmac
は、サイト固有のマクロとパッケージ用に提供されます。
デフォルトでは、メインのマクロディレクトリの前にここが検索されます。
groff
ドキュメントは現在も発展途上です。
ドキュメント間で一時的に小さな食い違いが生じる可能性があります。
このドキュメントは groff
すなわち GNU roff
配布物の一部です。 Bernd
Warken <
[email protected]>
が書きました。
このドキュメントは FDL
(GNU Free Documentation License) バージョン 1.1
以降の条項のもとに配布されています。FDL
のコピーをシステム上に
持っているはずです。また、これはオンライン
でも入手可能です。
主な情報源は、
groff
info(1) ファイルです。
定義済みの
groff
言語要素についても
groff(7)
マニュアルページに記載があります。
フォーマッタおよびそのラッパについては
groff(1),
grog(1),
nroff(1),
troff(1)
に記載があります。
出力デバイス用のポストプロセッサについては
grodvi(1),
grohtml(1),
grolbp(1),
grolj4(1),
grops(1),
grotty(1)
に記載があります。
標準プリプロセッサについては
eqn(1),
grn(1),
grap(1),
pic(1),
refer(1),
soelim(1),
tbl(1)
に記載があります。
マクロパッケージについてのマニュアルページには
groff_tmac(5),
groff_man(7),
groff_markup(7),
groff_mdoc(7),
groff_mdoc.samples(7),
groff_me(7),
groff_mm(7),
groff_mmroff(7),
groff_ms(7)
が含まれています。
次のようなユーティリティが利用できます:
addftinfo(1),
afmtodif(1),
hpftodit(1),
indxbib(1),
lookbib(1),
pfbtops(1),
tfmtodit(1),
gxditview(1) です。
roff システムの GNU
実装についての詳細は
groff_char(7),
groff_font(7),
groff_out(7)
および groff
ソース配布物のメインディレクトリ内の
README
ファイルを参照してください。
groff
開発グループとの連絡の取り方や参加の仕方についての
詳細も載っています。
古典的な
ドキュメントは今でもオンラインで入手可能です。
特に有益なのが、かのフリーである
UNIX 7
用のベル研オリジナルの
会報です。これは
http://cm.bell-labs.com/cm/cs/cstr.html
にあります。そして、故
Richard S. Stevens
のコレクションが
http://www.kohala.com/start/troff/
にあります。